インタビュー: オオフジツボ 藤野由佳

日本でケルト系音楽をいち早く取り入れたバンド、サバダックとの交流も深い、藤野さん。
自らを第2世代とし、第1世代へのリスペクト、第3世代への提言など、暖かい内容のインタビューになりました。
日本人がこの音楽をやることへの深い洞察も含め、貴重なお話を伺いました。

 

 

「純粋なアイリッシュミュージックバンドではないです。オリジナルバンドですね」

本岡くんとのなれそめは?

彼がButter Dogsのレコ発ライブで東京に来た時に、オオフジツボと対バンしていただいて。
オオフジツボが結成して1年後くらいの時でした。

オオフジツボのメンバーは、みなさん、キャリアの長い方ですよね。

みんなベテラン、私が一番ひよっこです。

2005年結成とありますが、そこまでの概略を教えて下さい。

もともと壷井さんと私が古い付き合いで、もう10年以上の。
アイリッシュ音楽を他のバンドでやることがあって、それで、それを自分たちで二人で中心になってやりたいね、
っていう話になって、ギタリスト(太田さん)が見つかって、オオフジツボになった。
太田さんは、壷井さんが「シャドウハーツ」というゲーム音楽で一緒に仕事をしたギタリストです。
弘田佳孝さんというゲーム音楽の作曲家の仕事です。
太田さんは、女性ボーカルのサポートを多くやっていて、歌ものギタリストといわれているのに、
インストバンドに入ってしまったと(笑)。

藤野さんはアコーディオン専門の方なんですか?

そうですね。もともとはクラシックピアノなんですけど。

オオフジツボの前に壷井さんとやってらっしゃったという、他のバンド、これは、サポートですか、それはどんなバンドですか?

ザバダック系と言われていたキルシェというバンドです。ケルト音楽に影響を受けている曲があったりして。

藤野さんはザバダックとのつながりもあるんですか?

はい。一枚、一緒にアルバムを出しています。
「宇宙のラジヲ」という、今までの名曲をザバダックの吉良知彦さんが歌い直したアコースティックアルバムです。

それはザバダック名義で?

そうです。
演奏は、私が別にやっているユニット、リヴェンデル(藤野、木村林太郎の2人組)と吉良さんを中心としたアルバムです。
ザバダックとは、ツアーを一緒に回ったりもしました。

木村林太郎さんの楽器は何ですか?

アイリッシュハープです。彼は弾きながら歌います。スコットランドやアイルランドの民謡を、ゲール語で歌います。

その木村さんとのユニット、リヴェンデルは長いんですか?

そうですね、長いですね。5−6年。オオフジツボより、ちょっと長いですかね。

トシ: 彼とは、アイルランドで会ってるんですよ。ダービッシュのライブを一緒に観てるんですよ。

だから木村君とは、私より、トシさんのほうが知り合いとしては古いよね。

木村さんは何歳くらいですか?

私と同い年。

トシ: 僕の1歳上ですね。

で、その木村君が吉良さんとフランスで一緒に演奏したりしていて、その縁で、私もご一緒させていただきました。
あ、壷井さんもザバダックのコンサートに一緒に出たことがあります。そこらへん、なんか、みんなつながっています。

壷井さんはどんな活動をなさってたんですか?

プログレッシブロックや東京のアンダーグラウンドシーンではとても有名なヴァイオリニストですね。
KBBっていうバンドをやっていて、今では世界中のフェスに出たり、トップ・ヴァイオリニスト的な人ですね。
ゲームからアーティストのサポートから、いろんなことをしています。

あえて、ヴァイオリンということなんですね。

もちろん、フィドル的な、アイリッシュ的なこともされるのですけれど、ケルトからアラブまで、
いろんな楽器の方とも共演していて、ひとつのジャンルに留まらない、ヴァイオリニストとして活動しています。

壷井さんはおいくつくらいですか?

30代後半くらいです。

太田さんは?

40代前半です。

オオフジツボって名乗る時は、主にアイリッシュの音楽をやるんですか?

はじめは、アイルランドのダンスチューンを私が組んで、アレンジしてやっていたんですけど、
3人とも曲を書くので、今は、ほとんど3人のオリジナルで構成されています。

ライブとかはどんなかんじですか?

アイリッシュ・チューンとかスコティッシュ・チューンも、多少混じりますが、基本的にはオリジナル曲です。

オリジナルは、アイリッシュ音楽とは呼ばないんでしょうか?

まあ、ドーナル・ラニーさんも(このCDへのコメントで、私たちの曲について)
「ケルト音楽の範疇に入る」っておっしゃって下さったことだし。胸はって。

トラッドをやるだけじゃなくてオリジナルをやることで、新たに・・・さらにアイリッシュ音楽への関わりを持つという。

そうですね・・・。自分の中にあるものの中の一部にアイルランド音楽の影響が確実にあると思うんですけど、
でもそれを出そうと思って曲を書いてるわけではなく、心の内から湧いたものを作っているので・・・。

じゃあ、オオフジツボは、アイリッシュミュージックバンドであると、断言はできないと。

純粋なアイリッシュミュージックバンドではないです。オリジナルバンドですね。

活動はライブ中心ですか?

そうですね、それと「空の鼓動」というアルバムを出してます。
その中に、アイリッシュのリールセットや、ジグセット、スコティッシュのエアーも収録されています。
そういうのが1/3で、2/3は私たちのオリジナル曲です。

ライブはどんなところでやってますか?

西荻窪の「音や金時」、大塚のGreco、この2つがメインです。最近は月イチくらいで演奏しています。

アイリッシュパブではやらないんですか?

全くやらないです。私たち、アイリッシュ・ミュージシャンではないので。

トシ: 立ち位置も3人、別々で。多分太田さんが一番、アイリッシュとは離れています。
壷井さんはアイリッシュ結構好きだけど、スタイルとしてはフィドルスタイルじゃない。
で、藤野さんは、結構アイリッシュ寄りで。アイルランドにもよく旅行に行かれたり、チューンを収集されたりとか。
そもそもアイリッシュ音楽歴はこの中で一番長いんじゃないですか。
Ash Groveの沢村さんと同じくらいじゃないですかね。

「日本人のリスナーが好きな、どアイリッシュじゃない、アイリッシュっぽい要素があるもの」

藤野さんが最初にアイリッシュミュージックに触れたのはいつ頃ですか?

20歳くらいの時に母の仕事に付いて海外に行った時に、たまたまアイルランドに立ち寄ったんですね。
で、その時の、ずっと曇っていて陰鬱な感じの風土が気に入って、そこからですね。それがきっかけになって。

90年代半ばですよね。当時日本で、ちょっとブームだったころですよね。

まあ、エンヤが出て来たり。

スタジオヴォイスがケルト特集したり(1996年)。

そうです。持ってますね。ああ、懐かしい。そうですね。そこらへんですね。

大島豊さんのアイリッシュ・ミュージッックガイド「アイリッシュ・ミュージックの森」が出たり(1997年)。

持ってます。でも、私このころ、まだアコーディオンをやっていませんでした。
その後キルシェというバンドで、アコーディオンを弾かなければならなくなって。
キーボーディストで入ったんですが。まあ、よくあることで(笑)。
それでアコーディオンに転向したのが大学4年、20歳過ぎてですね。

ちょうどアイルランドに行った後くらいですか?

そうですね。

その時はパブに行って、演奏を見たりしたんですか?

いえ。その時は見られなくて。本格的に行ったのは、一昨年です。はじめて、しっかり、いろんな所を回って。

90年代後半からバンド活動がはじまって。

自分も個人的にすごくアイリッシュミュージックをやりたいと思って、
ギターの人を誘ってアイリッシュパブで演奏とかしていたんですよ。
自由が丘とか四谷とか、天王洲とか、いろんな所で演奏させていただいて。
その後ですね、オオフジツボをはじめるのは。

その間は、キルシェもやってたんですか。

キルシェで、壷井さんと出会います。キルシェは人気があって。エッグマンで300人くらい集めるバンドだったんです。

キルシェはトラッドですか?オリジナルですか?

オリジナルです。
そこに少しケルト風味があるとか…そういうのは、ザバダック系っていわれる音楽には多いように思います。
好きな人、多いんですよね。
でも、キルシェの取り入れ方は上手で。プログレの影響とか、ザバダックの影響とか、
アイリッシュミュージックの影響とかを受けて、このバンドは出来ていたんです。

過渡期の時代、というか。このCDの今の20代の彼らと比べて。

彼らよりはひと世代上ですね。

先駆けというか。こういう活動があって、いまがあるというか。

いや、この前の世代に、もう一個上の。
吉田さんとか坂上さんとか、ブリティッシュ・トラッド好きな世代っていうのがあって。
あの世代の次が30代半ばの我々。
で、その下(今の20代)みたいな、感じになると思うんですけど。

そういうかんじになるんですね。

で、ゲームミュージックとも、関わりが深くって。
ケルト音楽を取り入れたゲーム音楽の作曲家、光田康典さんとも、キルシェのゲストとしてご一緒したこともあります。
そこらへんの世代みんながまとまっていた頃なんでしょうね。

藤野さんはゲームミュージックの作曲とかするんですか?

提供はしたことはありますが、それで商売をしているほどではないです。
頼まれればアレンジとか作曲とかやります。

壷井さんはゲーム系が多いんですか?

壷井さんは何でもやりますね。ゲームも多いと思いますけど。

ゲーム音楽は、昔はピコピコっていうイメージですけど、今は生演奏ですか?

今は、オーケストラの時もあります。
当時は打ち込み全盛期でしたけど、その後、本格的 に生の楽器を取り入れてみることがはじまって。
ゲームの容量も増えたので。

95年って、セガサターンやプレイステーションが出た頃じゃないかな。
次世代機って言って(正確には94年の11月と12月)。ゲームの容量がちょっと増えたんだよね。

キルシェもプレイステーションのゲームに楽曲を提供したり。
トシさんも、ファイナルファンタジー3で植松さんの曲を聴いてケルトに興味を持ったんだもんね。
先日はオオフジツボでも、植松さんのイベントで演奏しました。
植松さんのレーベルから楽曲をitunes配信していただいているので。

オオフジツボはゲーム音楽の要素とか上手く取り入れてるんですかね。

そういうことは考えたことがないですけれど…。
どアイリッシュではないけれど、アイリッシュっぽい要素がある…ということでしょうか。

このCDに入っている人達と一緒にライブをやったりするんですか?

トシ: たとえば、藤野さんひとりのことで言うと、彼女は他にいくつかバンドを掛け持ちしていて。
他に、ハンドリオンというバンドをやっています。

これはアイリッシュではなくオリジナルです。
木村林太郎くんの師匠の坂上真清さんという人がいまして、ケルティック・ハープの第一人者です。
もともとプログレッシブ・ロックの人なんですけど。
坂上さんは沢村さん世代で(いわゆる第一世代)、ザバダックのレコーディングにも参加しています。
坂上さんとJohn John FestivalのJohnさんと私で、坂上さんのオリジナル曲を演奏しています。
坂上さんが、それこそアイリッシュ音楽を自分で吸収して作っているオリジナル音楽です。

これ、ちょうど3世代にまたがってない?

そうなんです。これ、3世代バンドですね!

ちょうど12歳くらい、ひとまわりずつ離れてて。すごいですね。

これも音や金時でライブやったりしています。今年アルバムを出す予定です。

へー。

他にはトシさんともバンドをやったりしています。
Modern Irish Prijectの大渕さんと長尾さんと4人で、ナギィというバンド。
ナギィはwaitsと対バンもしましたね。

サポートのお仕事も多いんですか?

太田さんは石野真子さんとか。
太田さんは、ポップスも演歌もやるし、特に女性ボーカルのサポートが多い。
私はゲームミュージック系の女性ボーカルのサポートをすることがよくあります。
アイリッシュ系、ケルト系アコーディオンというくくりで、呼んでいただいたりして。霜月はるかさんとか。
大きなホールが満員になるような人気があります。

すごいですね。

ケルト音的なものって、ゲームミュージックとか、同人音楽とか、ファンタジー音楽と呼ばれるものとか、
そういうところに確実に根付いているんですよ。
で、どアイリッシュまでは好きじゃなくても、ケルト的なものが、ファンタジー的なものが好きとか、
そういう客層が多くて、人気がありますよね。

知らなかった。

そういう所には、ケルト音楽的な要素って絶対あるんですよ。

それはメロディのことですか?

アレンジから。アイリッシュっぽいフレーズっていうのもありますし。
土臭い、どアイリッシュとはちょっと違う、ファンタジー世界におけるケルト音楽みたいな。
部分部分を見ると、そうでもない時もあるけれど、作られたものを総体として見ると、ああ、なるほどね、
こういうところにケルト的なものを感じているのね、この作曲家は…ていうのがありますね。

「やっぱり日本人がアイルランド音楽だけを突き詰めていってどうするの?っていう話があるんですよね」

オオフジツボの今後の予定は?

オリジナル曲がたまっているので。毎回ライブで新曲を持ってこなきゃいけないっていうノルマになっていて。

おー切磋琢磨。

切磋琢磨して、そうして曲をためてきたので、年末くらいにセカンドアルバムのための録音をはじめたいなと思っています。
今回、オリジナルのジグを作ってみたんですよね。
オオフジツボの立ち位置は全然アイリッシュじゃないんだけど、みんなの今までのキャリアがあるので、
それから、そういうものに戻した時にどういうものが出来るのかな、っていうところで、面白いと思います。

トシ: 今回、ドーナル・ラニーが一番絶賛していた曲だと思うんです。

嬉しいです!

オリジナリティーって絶対大事なんでしょうね、音楽をやる上で。

トシ: オオフジツボになぜ、今回のオムニバスに参加してもらいたかったかっていうと、
カテゴリー的にはアイリッシュバンドではないにせよ、吸収して自分の要素として音楽を創っているバンドとしては、
一番完成度が高いと思ったんです。で、参加してもらったら、その通りの評価が返って来た。
しかもアイリッシュの畑の人から。これは、しめたな、というかんじですよ。

いやー、壷井さんのプロデュース能力ですよ。壷井さんがスタジオにこもって、録音して、ミックスして、マスタリングしてね。

トラディショナルをやって、アレンジをしていって、そこで独自性を見せていくということがひとつあると思うんですけど

確かにそれも興味のあるひとつではあります。
そうしたトラディショナルチューンは、毎回、ライブでやりつつ、練っていくところもあります。
このベテラン二人は、特にアレンジの引き出しが多いので。
私が元締め的に、アイリッシュだとこうやるけど、とか言って、それにプラスアルファ、
私が考えつかないようなことをこの人達が言って、それをみんなで摺り合わせていく、みたいなところがあります。

このバンドが、いま、東京で、一番、色を出しているのかも知れないよね、ひょっとしたら。

アイリッシュじゃないことも多いけどねー。

トシ: そういうことじゃないんです。オリジナリティとして消化してるってことですね。そう思います。

うん。

トシ: どんどんアイリッシュを突き詰めていった形のひとつが、これだと思うんですよね。

まあ、これはどんなアイリッシュミュージシャンも突っ込まれるところなんですけど、
やっぱり日本人がアイルランド音楽だけを突き詰めていってどうするの?っていう話があるんですよね。
坂上さんもおっしゃってたし。木村君も。
みんな何かしら絶対に問題意識みたいなものを持っていて。
壷井さんもこの曲を入れる時に言っていたんですけど、結局は日本人だから、
アイルランド音楽だけをやってもねって、思ってるんですよね。
それならば、それも取り込んだ上での自分の中にある思いみたいなものを形にする方が私たちは好きです。
それしか出来ない、とも言えますけど。そこは、決定的にアイリッシュミュージシャンと違う。

トシ: でも、オオフジツボのきっちりとしたトラッドのセットもあって、それも実は聴いてもらいたかったっていうのもあるんですよね。

ありますね。

それは凄く良いんだ。

トシ: 良いですね。やっぱり、オオフジツボとして練り上げられているので。
そういうのを向こうのアイリッシュの人が聴いてどう思うのか、っていうところが気になりますね。

そういう選択肢、全くなかったんだよね。曲どうする、って言った時に、誰の曲を入れる?から来たからみんな。

トシ: でも、それが、スパっとオオフジツボのスタンスを表しているからいいんじゃないですか?

オオフジツボとして、ボーカリストと一緒にやったりする計画は?

ないですね(きっぱりと)。でも、太田さんの仕事として女性ボーカリストのサポートをしたことはあります。
サポートでアルバムにも参加したりもしているし。オオフジツボでセット売りしています。いい仕事しますよ(笑)。

「日本人としてのアイデンティティを持ちながら、この音楽をやっていく必要があるんじゃないかと思います」

みんなそれぞれ変化があって面白い。
20代の子達は、猪突猛進という感じでしたが、オオフジツボはちゃんと考えているという印象を持ちました。

スタンスもよくわかっているし、自分が出来ること、出来ないこともよくわかっているし。
その上で、やりたいことがしっかり決まってますね。よりクオリティの高いものを作っていくことしかない。
これでなんとか世に出て、っていうのがない代わりに、クオリティの高いものを作っていこう、ということなので。

そういうことですね。これで別にお金を儲けなくてもいいしっていうことがあるからね。はっきりと。

そうですね。うん。

このバンドで、このバンドにふさわしい良い音楽をちゃんとやっていこうっていう、というスタンス。

もう、ほんと、それだけ。それがお金につながれば言うことなし(笑)。

そういうことですよね。それは結果としてね。

みんな売れっ子なので。そういうバンドです。

純粋な。純度が高いというか。

ある意味、通り越しちゃったというかんじですね。この間も、壷井さんがはやぶさに感動して曲を書いていましたけど。

はやぶさね。小惑星探査機の。

あれが帰って来る日がライブで。作った曲、凄く良い曲だった。壷井さんにしては珍しくメロウな。

オオフジツボとして、目標は?

よく言うのは、じいさん、ばあさんになるまでやろうっていう。
みんな忙しくて、体を悪くしたりしている中、まあ、なるべく健康でバンドを続けてアルバムを作ろう、みたいな。
もう、それだけです。みんな歳だから、健康に気をつけてねっていう感じです。

すごいなー(笑)。

たまにツアーいけたらいいね、みたいな。

ツアーも結構やってるんですか?

大阪の万博公園で開催されたロハス・フェスタというのに呼んでいただいたことがあります。
北海道にも行きました。北海道は、Hard to Findとか本当にいいケルト系ミュージシャンがいるんです。

アイルランドに行って演奏、とか、ないんですか?

別にないですね。
壷井さんとか、スペインとかでソロでライブやったり、普通にやっているので、目指すことでもなく、
普通にそのクオリティに達しているので。わざわざアイルランドに行って、っていうことはないですね。
アゴアシつきでそういう話があったら飛びつきますけど(笑)、自分から行ってなんとかっていうのはないです。
本当に上質なものを作っていこうということだけです。

ひと世代下の人達に向けて何かメッセージを。

純粋に追求していける立場にいられる時期は短いと思うんですよね。
音楽を仕事にすればそれなりに大変だし。そうじゃなければ(お金を稼ぐ仕事と音楽を)両立させるのが大変だし。
だから、打ち込める時に、なるべく自分の純度を高めていけることが大事なんだと思うんですよね。
それが財産になって10年後、20年後に活きて来るので。
昔、私たちの時は、音源を手に入れるのも大変だったし、今みたいに、インターネットなんか普及してなかったので。
私なんかカセットテープの時代で、一生懸命探したり、聴いてたりしました。
今は何でも手に入るし。その分、レベルの高さっていうのも要求されて大変だと思うんですけど。
だから、打ち込める時に、嫌になるくらい打ち込めれば、幸せだな、と思います。

この世代、なんか一群になってるような雰囲気ないですか?

まとまってますね。皆はこの先どうしていくのかな、とは思います。やっぱり、日本人なんで。
でも、それで逃げちゃって、日本人だからやっぱり、っていうふうになっちゃうのもあれだし。
難しいところですね・・・。もっと、一人一人がより個性的になっていく必要があるんでしょうね。
勿論皆さん今でも十分素晴らしいけど・・・。
私もアイルランドで聞いて思ったんですけど、やっぱり確実に現地人と違う所はあるので。ノリとか。
体の中に流れている血とか。農耕民族と狩猟民族ぐらいの違いがあるんですよね。
私も、それをまざまざと体験したわけなんですけど。だから、やっぱり日本人としてのアイデンティティを持ちながら、
この音楽をやっていく必要があるんじゃないかと思います。この先、どうなって行くのか、楽しみですね。
偉そうですけど。

いやいや、そこがポイントなんですよね。

そうですね。トシさんみたいな人がもっと盛り上げてくれて、もっと本格的になって行くとまた違う道が・・・。
お金の話になってしまいますけれど、これだけじゃ、現時点では食べてはいけないから。
まあ、トシさんがきっとなんとかしてくれると思うんですけどね(笑)。 全員(笑)

でもレベルが追いついて来ていて。ほんと、みんなが自然に、呼吸をするように演奏出来ているんですよね。
なんか、日本人にしかない空気感っていうのもあるし。
アイリッシュ音楽にある、台風のようなグルーヴ感とか、それがあるとまた違いますけど。
どこまで伸びていけるのか。これからじゃないですかね。
毎回、ブームの度に、リスナーもプレイヤーも増えるんだけど、またしゅーんと落ちて。
また何かブームが来たら、みたいに、ブームに合わせてなんとか、っていうところもあるので。
今、こうやってずっとやり続けるっていう決心でやっている人達がいると、変わっていくんじゃないですかね。
トシさんはそれを信じてやってるんでしょうしね。

1996年頃の、スタジオボイスで特集されてた頃とは、ちょっと違うかなと・・・。

いや、もう相当違いますね。
小さい頃から、というか、自然に空気を吸うように(アイリッシュ音楽を)取り入れる世代が出て来てるので。
驚くべきテクニック、とかね。これだけ自分のものにしてすごい!というのがあります。

そこが、今回のCDを聞いてびっくりしたところですね。

でもね、民族音楽なんで。

そうなんですね。いま、なぜ、東京で?という問題がつきまとう。

そうですね。アイルランドでもみんなびっくりします。
なんで、日本人がこんなにアイルランドの音楽が好きなんだ?って。
唱歌とか、昔、小学校で聞いたような曲から影響を受けてるからって、一辺倒には言いますけれど、ま、好きなんですよね。
だからもっともっと、いい形で根付いていくと良いですよね。
どうしても、ただのマニアックなジャンルをやっているミュージシャン、みたいなかんじで(見られてしまう)。
他の音楽でもそうですけど。「専門にドイツ音楽をやるバンド」とかね。ヨーデルやるとか。
小さくまとまらないで欲しいな、と思います。

この中からヴォーカリストが出て来たらすごいね、って話してるんですけどね。

ヴォーカリスト・・・。ヴォーカリストがいないんですよね。
知り合いで、すごく好きでゲール語で歌っている人はいるんですけど、まあ、木村君もそうですが。
そういうふうに、好きで細々とやってる人はいるんですが、ヴォーカリストとしてっていう人はいない。

それが出て来た時に変わるかな、と思うんですよ。

そうですね。結局皆オリジナルの方に行っちゃうんですよ。

あと、日本語の問題もある。

取り入れることは好きなんですけどね、ヴォーカリストって、アイルランドの曲とか。

そこで終わっちゃうっていうか。

言語の問題って相当大きいですよね。
英語で歌っちゃうと、それは本質的には違う。でも、ゲール語って、地方によっても発音が違うし。
でも、それは私が好きな日本の民俗芸能でも同じですね、例えば方言みたいな、血の中から生まれるもの。
その、ミッシング・リンクを埋めるヴォーカリストがいると、素晴らしいんですけど。

そうですねー。

「クオリティを上げていくしかない。いいものだけが残って行く。そういう時代になったんだと思います」

でも、日本人の民族音楽好きって、世界的に見ても特殊だと思います。
私も、蛇腹姉妹といって、東ヨーロッパの音楽を演奏したりもするバンドをやってるんです。
そのつながりで、ブルガリア音楽をやっている団体っていうのを知ったんです。
えらい変拍子のダンスを、日本人が見事に踊ってて。民族音楽好きって、日本人らしい求道精神で、学ぶんですよ。
どんなジャンルでも、よっぽどマニアックでも、日本人にはやる人はいますからね。アイリッシュ音楽だけじゃなくて。

東欧っていうのは、どのへんですか?

ブルガリアとか、ルーマニアのトラッドを、アコーディオン二台でやるんです。

あのへんって変な音楽がありますよね。深いですよね。

面白いです。アイリッシュだけじゃなく、アコーディオン音楽が好きなんですよ。
なので、北欧の音楽もやったり。アコーディオンで合う、そういうヨーロッパ系の音楽を。
そのユニットでも、自分で曲を書いたりしています。オリジナルをやりながら、トラッドも。
日本人はほんと、そういうの取り入れるのが好きだし、それが出来るし。

トシ: 日本って、いろんな音楽に触れられる機会がすごく多いじゃないですか。
そういう土壌って、アイルランドに住んでいたら無いので。
アイルランドでアイリッシュ音楽だけをやっていたら行けない境地に、日本でアイリッシュ音楽をやっていると行ける、という。
それが、日本人のアイデンティティになるんじゃないのかな、と思います。いろんな音楽を入れちゃえる、という。

器用というか。探究心と完成度といったら、すごいな、と思います。

そのミクスチャーって結構難しい。混ぜりゃいいってものでもないし。

私、沖縄の三線とアイリッシュを混ぜたことがあります。

それは合うんじゃないですか?

そうですね。

混ぜるといえば、ディープフォレストとエニグマも良かったけど、ああいうの、もうちょっと行き詰まってる気がします。

好きでしたね。あと、ヒーリング音楽とかイージーリスニングとかもすごく好きです。ウインダム・ヒルも。

おお、ウインダム・ヒル。すごくいいですよね。でも限界が・・・。

ウインダム・ヒルで、アイリッシュの要素を入れたナイトノイズっていうのがいて。好きでしたね。
今聞いても良いんだけど・・・。

だから、そういう、80年代や90年代のものと比べて、だんだん進化しているような感じがあります。
その先に、民族音楽をポピュラー的にやれる、別のベクトルがひょっとしたら、あるのかも知れない。

あるのかも知れませんね。でもそのためにはそれぞれが必死にやっていくことでしか答えは出ないんですけどね。
本人達は自分のことを一生懸命やることでしかないんです。やっぱりクオリティを上げていくしかない。
いいものだけが残って行く。そういう時代になったんだと思います。

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コメント: 1
  • #1

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