インタビュー: Ash Grove 沢村拓

今回のCDにご参加いただいたアーティストの中で、沢村さんは多分、最年長。
我々は、強引に、アイリッシュ第1世代と呼ばせていただいている。
彼らなくしては、今のアイリッシュミュージックの隆盛はなかったであろう。
70年代後半に、プログレッシブ・ロック・バンドでデビュー、その後、数多くのセッション活動を行いながら、
その一方で、アイルランド音楽の研鑽も続けて来られた。
もの柔らかな姿勢で、優しく、新世代を見つめていただいている。
彼のAsh Groveには、メンバーに第3世代と呼べる30代のイーリアンパイプ・プレーヤー、内野貴文さんがいる。

沢村さんの略歴

沢村さん、結構キャリアの長い方なんですよね。

そうですね。最初に録音をしたのは19の時でしたから。

その時はギターを?

そうですね。

そのあたりのことからお伺いさせて下さい。

あんまり関係ないかもしれないんですけど。いわゆるプログレバンドみたいなのをやってまして。
当時、日本にロックシーンってなかったですから。
紙媒体といえば、明星とか、そういうのなんですけど。
アルファレコードから1枚レコードを出しました。

それはなんというバンドですか?

ムーンダンサーというバンドです。1979年かな。
メンバーには厚見玲衣がいました。
その後、ムーンダンサーが分裂して組み直したバンドで1枚。

それは?

タキオンというバンドです。

ほぼなにもシーンのない状況でやってらっしゃったんですよね。ライブはどんなところで?

浅草国際ロックフェスティバルなんてのがあって。

内田裕也さんの。

そうですね。それに出たりしてました。

その後はどのような。

その頃はまだ学生だったんですよ。
卒業時期にからんでましたんで、真っ当な就職はできませんで。
そのまま、サポートですね、シンガーの。で、そのままずるずるずるっと今日まできちゃたんですよ(笑)。
一番最初は西城秀樹さんとか。 あと今井美樹さん、米倉利紀さん、…辛島美登里さんとか。
別の現場でチェコのオーケストラと一緒 だった時は無理矢理ブズーキも使わせていただいて。

ご自分のバンドも並行してずっとあったわけですか?

いえ。ケルト的なものはずっと、中学校くらいの時から好きでして。
スティーライ・スパンのセカンドが出たのがちょうど中学校の1年だったんですよ。

プランクシティとかもリアルタイムで?

その辺はないんです。
プランクシティが知られるまでって、だいぶ間があって。
70年代初頭はブリティッシュ・フォークっていうので、けっこう盛り上がってたんですよ。

プログレとリンクするとかで?

そうですね。
例えば、プログレバンドでもジェスロ・タルとかそういうのはけっこうモロ入っているじゃないですか。
そういうのと並行して、そのルーツみたいな形でそういうのがすごく好きで。
さっき言った、タキオンというバンドのシングルなんかは、イントロだけ聞くとジグみたいな。
それくらいのこだわりは自分の中にはあって。

当時、そういうことをやっていらっしゃる方っていないですよね。フォーク系になったりとか。

日本のフォークはどちらかというと、アメリカン・ルーツミュージックとか、そっちが強くて。
ケルトを感じるものってあんまり僕は・・・知らないかな。ザバダックとかくらいかな。

ザバダックは80年代半ばですよね。それまであんまりなかったんですかね。

そうですね。今も、あるかっていうと、あんまりないじゃないですか。

アレンジ上で若干そういう要素を取り入れるということはやったとしても、
それをずっぽりやるというのは、なかなかないんですかね。

だから、こういうシーンから、これが自然に広まっていって、
自然に、ご飯を食べるようにそういうことがやれる人達がいっぱい出てきてくれたら嬉しいな、と思います。

すごいことですよね、それは。僕も、今回のコンピで、こんなにたくさんそういう人がいるって知ってびっくりして。

そうですよね。特に若手がやっぱり素晴らしいですよね。

20代前半の子達がね、

もうほんとに。

Ash Grove結成

沢村さんのアイリッシュ系のバンドというのは、このAsh Groveからなんですか?

Ash Groveの前身というか。
プラス二人、コンサーティーナと、テナーバンジョーをやっている人がいて、
シャノンズっていう名前でやっていたんですけど。
集まったいきさつは、大崎のシャノンズというアイリッシュ・パブが、
1999年にゴガティーズっていうダブリンのバンドを呼んで、
オープンスクールみたいなことを企画したんですよ。
アーリーミュージックっていう楽器屋さんの吉原さんという人から(そこで楽器を一回買ったんですけど)、
面白そうだから見に来ないか、と誘われて。見に行って。
その時に、今のメンバーのイーリアンパイプの内野君と知り合ったんです。
で、2000年に、コガティーズが2回目のレッスンをするために来日した時に、
その大崎のパブで、オープンスクールに参加した人達で1曲弾いて迎えてやろうじゃないかと。
で、その時に僕は、ブズーキは持ってたんですけど、別にセッションに参加したいという気持ちはなかったんですよね。
なんかギャップがあって、ブズーキの実力に。
ギターとしては完成していたので、こんな拙い演奏じゃ人前では弾けないっていうのがありました。
でもそういう若い人達と一緒ならいいかなということで、ジグとか2曲くらいやったんですかね。
そしたらけっこうそれが評判よくて。で、その中の有志が集まって、シャノンズになったわけです。

じゃあ、けっこう新しいキャリアのスタートだったわけですね。

僕、40の手習いですね、本当に。楽しいですよ。

なぜそこで、アイリッシュになったんですか?

んー。先ほども言ったようにケルトものが好きだった、アイリッシュも含めて。
だからコード付けなんかをするにも、結局子供の時からの感覚で。
例えばwaitsの下田くんなんかは、コードの付け方が面白いって、ちょっと褒めてくれたりするんですよ。
多分、子供の頃聞いていた、ケルトのルーツミュージックの影響を受けているジェネシスだとかあるわけじゃないですか。
ジェスロ・タルとか。
そういう人達がやってきたコード感を、逆に僕がトラディショナルに戻しているような感じの錯覚が
浮かぶような時がありました。それがループしているような感じですよね。
下田くんとかは多分、その辺の音楽を聞いていないから、ちょっと新鮮に映ったんじゃないかな。

プログレ出身の方がこれをやってるっていうのは、すごく必然性を感じます。

ええ。すごく関係が深いですからね。
ブラックミュージック以外の音楽でロックを形成するっていうのがプログレの考え方だったと思うんですけど。
だからプログレのルーツミュージックって言ったら、やっぱりケルトなんですよ、僕にとってはね。
だから、このオープンスクールに行って、ウエルカム・セッションするからねって、
大勢の人達がぱっと旋律を弾いた時に、わー生でこんなこと本当に出来るんだって、本当に嬉しくなっちゃって。感動しましたね。

それは何人くらいで演奏したんですか?

その時は10人くらいで。セッションっていうかたちですからね、楽器持ってる人は全員弾くみたいな。
これはレコードの中で聞く音楽だって思ってましたから。
実際に生で出来るんだ、と、嬉しくなっちゃって、その年に自主制作のCD-Rを録っちゃって。はしゃいで。

ライブはパブとかで?

そうですね。パブが多かったですね。当時は演奏できるパブも(今よりは)もうちょっと数がありましたし。

このバンドの他のメンバーの方についてお伺いしたいです。沢村淳子(あつこ)さんは奥様で。

はい。

ボタンアコーディオンと、ハープ。ずっとアイリッシュを?

もともとはクラシック、合唱団の伴奏ピアニスト。僕と同級生です。高校が一緒で。

イーリアンパイプの内野さんは、お若いんでしたっけ。

33歳です。1977年生まれかな。

彼はイーリアンパイプをずーっとやってたんですか?

いや、最初はアイリッシュフルートで。
パイプをやり始めてもうどれくらいになるのかな・・・、もう8年くらいにはなるのかな。
彼は非常に器用な人で、手に入れてから1年くらいで、もうパブではやってましたけど。

内野さんは他にもいろいろやってらっしゃるんですか?

バンドというか、セッションをたくさんやってます。あと、クラブ系の、DJとかと一緒にやったりして。
サンプリングマシーンとかを扱う人と、VJと、イーリアンパイプっていう。けっこう面白かったですね。

Ash Groveってどういう意味ですか?

それは、ウエールズのソングのタイトルなんですよ。

そういう歌があるんですね。日本語に訳すとどういう意味ですか。

「トネリコの森」ですかね。トネリコっていう樹があるんですけど。

Ash Groveで新録の予定はないんですか?

音源とライブってまた別じゃないですか。最初のCD-Rの時は全然迷いがなかったんだけど。
今は、なんかちょっと、どうしたらいいかわかんなくて。
ライブで今普通にやってることをそのまま録ってもなんか違うかなって思っちゃうんですね。

このCDの「楽園セット」はライブとは違うんですか?

大部、組み替えてありますね。アコーディオンのソロも生かしたいし、パイプで始まりたいし、
明るめのリールで終わりたい、って。リールの頭の曲を外して。

これライブでやるの難しいですか?

前半と後半で違うセットなんですよ。
前半のアコーディオンソロから、これとは全然違うリールに繋がってやってて、今。
で、後半のリールは、3曲セットで、頭に違うのがついていて。
多分、次にライブでやる時は、その前にパイプをちょっと付けようかなと。
録音だとねー。何かもうちょっと降りてきてくれないと、というのがあって。
もしくは、ちょっとくらい曲を書いた方が良いのかも知れない。

Ash Groveは最初からトラディショナルを中心に演奏していたんですか?

基本的にはトラディショナルではあるんですけど。
もちろん、オリジナルをやってみたいという気持ちはありますが、いまは まだ・・・。
いずれにせよ、アイリッシュパブではそういうことってやりにくいわけじゃないですか?
自分の修行もかねて、最初はトラディショナルのチューンを自分なりの、昔憧れたケルトの感覚で、演奏できたらいいなっていう。
既にあるかたちに拘らずに、みたいなかたちですね。

プロフィールにある、邦楽や現代舞踊とのコラボレーションってどんなことをやったんですか?

それは、今年、津軽三味線の二人組とやったことを書いてあります。
結構面白かったですよ。 やっぱり、三味線って基本的に単旋律じゃないですか。
取り組み方も、アイリッシュトラッドをやる時と同じ形でブズーキに取り組めるので、なんかけっこう楽しいんですよね。

2005年に偶然来日時にバンドの演奏を聴いた、イングランドのアコーディオン奏者R.Crain氏のお招きで渡英と。
これは何ヶ所くらいでライブを?

コンサートが1回と、アイリッシュクラブ、小学校、、、4ヶ所くらいだったと思います。

だいたいどのあたりに行ったんですか?

サリー州と、ハンプシャー州で、ロンドンからさらに南の方ですね。

そういうところで、アイルランドの音楽をやると、うけるんですか?

上々でしたよ。実際そのR.Crainさんがモリスダンスをやっていて。
アイリッシュダンスとはちょっと違うんですけど、寸劇とかが入って。
ただ音楽そのものは結構、スコットランドとかアイルランドとかのダンスチューンをそのまま流用している事が多いんで。
実際3人で弾きだすと、モリスダンスのチームの人達が一緒に、ぱっと笛ではいってきたりとか。
なんか楽しい事があるんですよね。

トシ: バンドとして向こうで演奏した日本のアイリッシュバンドって、Ash Groveがはじめてなんじゃないですか。
あんまり聞いた事がない。

そうですかね。
でも、それは、自分達で何としてでも、というよりは、呼んでいただいてというかたちですから。
ラッキーだったという。

ブズーキについて

沢村さんはこのバンドではアコースティックギターとブズーキっていうことですか?

いや、実際にライブでやる時はギターは弾かないですね。ブズーキ一本やり。

そうなんですか。

ケルトの音楽が好きだったというのはもちろんあるんですけど、ブズーキにはまた特別な思い入れがありまして

それはどんな。

ちょっと中近東に住んでた事がありまして、1970年に、1年だけなんですけど。
トルコのアンカラっていう所に住んでました。
(そこにあった楽器が)サズって言うんですけどね、向こうではブズーキとは言わない。
トルコのサズが、ギリシャに渡って、それがブズーキっていう名前になるんですよ。
それが1950年くらいですから結構新しい話なんですけど。
で、その小型のやつを、まあ、土産物的なやつを持ってて、
けっこうジャカジャカ弾いて楽しい楽しい、ってやってたんですけど。
ドーナル・ラニーが来日した時に、1996年だか97年だかちょっと忘れましたが、
観て、あーっ、サズだ!みたいなかんじで。
これどうしても欲しいってことになっちゃって。

ドーナル・ラニーがアイルランド音楽にブズーキを導入したんですよね。

いろんな説があるんですけど、プランクシティのもうひとりのブズーキ奏者、
アンディ・アーヴァインじゃないかって言う人もいますし。

トシ: でもフラットにしたのはドーナル・ラニーだって、聞いた事があります。
最初、ボディの裏側が丸く膨らんでいて、それをスパッて切っちゃった、という。

1970年代半ばのプランクシティより前は、ブズーキをアイルランド音楽に使うことはなかったと。

そうじゃないか、と言われていますね。

ちなみに沢村さんはどういったタイプのブズーキを使っていらっしゃるのですか?

一番最初に買ったのは、グリーク・タイプで、後ろが丸くて、柄がいっぱいついたやつで。
それしか手に入らなかったんですよ。で、90年代終りくらいにやっとアイリッシュ・ブズーキを手に入れて。

何弦なんですか?

4コース8弦ですね。ユニゾンで。2、2、2、2の。
複弦にするっていうのはいろいろと理由があるんですけど。ひとつには音量が稼げること。
もうひとつは、倍音が出ると。
若干チューニングがどうしてもずれるじゃないですか、で、うねりが出るという。
マンドリンとかと同じですよ。あれも、ユニゾンで4コース8弦という。

弦は鉄弦なんですか。

そうですね。

切れちゃったら、どこで売ってるんですか?

ははは。昔はすごい苦労したんですけど。

エレキの1弦買ってきたりとか?

それこそ、バラ弦買って。
しかも、ループって言って、こういうやつじゃないんで。爪の状態ですから。
ボールエンドのボールを外して。失敗するととれちゃう、ダメになっちゃうんで、結構緊張しながら。
そこからはじめてましたよね。

今は売ってたりするんですか。

いまはけっこう手に入ります。僕は高知の楽器屋から通販で手に入れてます。

そこでつくっているんですか?

そこは輸入楽器屋です。ネットで簡単に注文できるんで、いちばんいいです。

ずいぶん便利になったということですね。

便利になりましたよ。一番最初に買ったアイリッシュブズーキは、爪なんで。
まず、知り合いの、楽器をメンテしてくれている人に頼んで、その爪を削ってもらって、そこに、丸い穴をさすと。
でも強度が悪くて折れちゃったりとか。じゃあ、今度は、ビスを入れてみようとか。
いろいろ試行錯誤を重ねて。

これは、エレクトリック化はしていないんですか。マイクを内蔵させたり。

いわゆる、ピエゾって言うんですけど、圧電素子というか、普通のエレアコについているようなのをつけていますけど。

右手は、ピックなんですか、指なんですか。

基本的にピックですよ。

ギター用と同じものですか?

ギターのより僕は小さいのを使いますけど。

それも高知でかうんですか?

いえ、これは普通にイシバシ楽器とかで。

これは難しい楽器ですか?ギターが弾けると、ちょっと弾きやすいとか。

メロディーとは関係ない、それと喧嘩するようなものを、コード弾きながらでも出せますから、ブズーキでは。
そういう事をやってますね、ギターじゃちょっと無理なんで。
まあ無理ってことはないけど、すごい大変なんで。

これはフレットがついている楽器なんですか。

はい。

基本的な事ばっかり聞いてすみません。これは普通にイシバシ楽器とかで買えるんですか?

楽器屋ですぐに買えるんだろうか・・・。でも、日本製がありますからね。ヤイリが作ってますから。

あんまりポピュラーな楽器じゃない、と。

僕はもっとポピュラーになって欲しいんですよ。ギターとは全然違う楽器ですからね。
で、まだ全然固まってないじゃないですか、人によってどんなプレイをするか判らない、これからの楽器ですから。
これは絶対広がって欲しいんですよね。少なくともウクレレよりは有名になってもらいたいですよね。

ブズーキって、アイルランド以外でも普通に使われる楽器なんですか?

結構、最近、いろいろなのを見ますね。
ルーマニアのアコーディオン奏者のCDを買ったら、アイリッシュブズーキだったりとか。
まあ、ワールドワイドでいったら、ギリシャのブズーキの方が有名でしょうけどね。

アイルランドの音楽ってすごいですよね。いろんな楽器を入れても大丈夫っていうか。もともとギリシャの楽器だったのに。

トシ: ブズーキの特徴って何ですか?他の弦楽器と比べて。

僕個人の意見ですけど。
サズから来ているっていうのもありまして、やっぱり、しっかりコードを押さえるというよりは、
全部の弦を鳴らしつつ、開放弦が鳴っている状態の中で、こう、何かラインを動かしていって、
それが結果として和音のように聞こえる、みたいな状態に行けた時が、いちばん自分としては楽しいというか。
実際自分が楽しいわけですから、聞いている人も多分気持ちいいんじゃないかなと。

これっていわゆるオープンチューニングみたいな状況になっているわけですか?

1度と5度っていう感じの鳴りがしますけどね。真ん中の弦を使って動かすか、
上を使うか、まあ、それはその都度その都度で。
だから、感覚としてはギターよりベースに近いようなつもりで弾いています。
ラインをうねうね動かす事によって、グルーブ感を出していくような。
だからしっかりとコードを押さえて、テンションを出したいとか、加えたいとか、そういうのはちょっと難しいんですよ。
まあ、5度間隔のチューニングだっていうのもあるんですけど。ちょっと手が届かない。

細かいコードワークをいろいろやっていくというよりは、グルーブを出していくような。。。

ともかく、開放弦は常に何か鳴っているっていう状態が一番美しいと思っています。

弦の数は全然違うけど、シタールとかもそうですか?

あれは、もっとモロですね。ライン専用の弦と。三味線とかに近いんじゃないですかね。
一緒に鳴らす弦はそのメロディーラインの伴奏、みたいな。
ドローンみたいな感じですよね。ブズーキは、もうちょっとそこから外れて、中間よりというか。
まあ、オリジナルはそういう所から来ているんですけど、サズですから。

教室を開いて教えたりしていますか?

それはないですね。
やる人達が実際に、こういうことをしたいというのが明確であれば、別に教えるとかじゃなくて、
聞かれれば、僕はこうやってるんですけどって言えるんですけどね。まあ、漠然とと言うことになると・・・。
むしろ、なんかわかんないで弾いちゃってて、すごく変わった事をやる人がいる、
みたいな人が何人もいるようなな状況があったら、それはそれで僕は楽しいと思いますね。
まだ、HOW TO PLAY ブズーキっていうところまで行っていないと思うんですよ。
楽器としてまだ新しいですから。
こういうふうに弾くもんなんだって、あんまり固まってもらっちゃ困るかなっていう。まだ。

トシ: バウロンも同じです。アイリッシュってそういう楽器が多いですよね。

ああ。特に伴奏系はそうかも知れませんね。もともと伴奏がない音楽でしたからね。

トシ: トラッド指向の人は、伴奏に対してシビアな反応をする人もいるし。確かに伴奏が入ると聞きやすくはなるんですけども。

それをやったのがプランクシティとかってことですか?

んー。例えば、ブンチャ、ブンチャっていうのも伴奏と言えば伴奏ですが。
ただ、プランクシティとかボシーバンドとか、あの辺の人達の登場によって、すごく、現代的な、というか、
トップ40ミュージックを聞いてる人達にも聞きやすいようなアレンジというか、それは絶対あると思いますね。
やっぱりあの人達の功績はでかい。
それはまあ、もちろんそうなんですけど、僕が中学校時代に聴いていたブリティッシュ・フォークというのも、
トラディショナル自体はスコットランドやアイルランドだったりするんですけど、
やっぱりかっこいいな、と思いましたからね、その時既に。
その辺のひどいロックよりはこっちの方が良いかもしれないっていう。

「ちょっと邪道なんだけど、聞きやすい形で流れ出したことによって、

その間口がちょっと広がったとか、そういうことももしかしてあるのかも知れないですね」

革命みたいなのが70年代初期にあったということなんですかね、音楽的な。

実際に、日本のこのシーンでも、例えば、ボタンアコーディオンの吉田文夫さんとか(関西にいらっしゃるんですけど)、
その辺の世代の人達は、ブリティッシュ・フォークをよく御存知だと思いますけどね。
僕らなんかの世代まではそれ(ブリティッシュ・フォーク)で入って、
40代くらいの人は多分、ポーグスとか、もしくはシン・リジィとかそういうあたりから。
ポーグスは大きかったかも知れないですね。

1996年に、コモングラウンドっていうオムニバスが出て、ちょっとブームになる。プロデュースはドーナル・ラニー。
U2のボノや、シンニード・オコナー、エルヴィス・コステロなんかが参加して。シャロン・シャノンもアイドル的な人気でしたね。

やっぱシャロン・シャノンはね、すごく影響を与えたと思いますよ。あのアルバムで来日したじゃないですか。
僕なんかも観に行ったんですけど。やっぱりね、スター性がありますから。
そのアルバムに収録されている、シャロン・シャノンの「CAVAN POTHOLES」っていう曲は、ドーナル・ラニーの作曲で、
リズム隊はスライ&ロビーっていうジャマイカのレゲエの二人なんですよね。けっこう先鋭的なことをやってて。

さじ加減がいいんですかね。

やっぱり愛があるんじゃないですかね。何何っぽいものをやろうっていうんじゃなくて。
熟知している上でなんかこういうのをやってみたいというので。でも「コモン・グラウンド」良かったですよね。

すごい盛り上がりましたよね。

トシ: 沢村さんはずっとシーンを見続けていらっしゃいますよね。日本におけるアイリッシュのシーンの動きってどうですか。

あー。でもね、基本的に僕、引きこもりじゃないですけど、セッションとかにあまり顔を出さないですから。
感覚的には、昔よりもだいぶ垣根が取れてきたような気はしますけどね。
昔は、例えば僕なんかがブズーキを弾き始めた頃は、既にパブで演奏している方々はもちろんすごく上手で、
ただ、なんかちょっと入り込みにくい感じというか。
本人達にそういう意識があったかどうかは判らないですけど、まわりがそういう空気を作っちゃったのかも知れないし。
そういう意味で、なんか、今の方が、全然、若い人達がさばさばしてて。
もう普通の音楽をやっている感じで、別に特別な音楽だとか、俺はわかってるぞすごいだろ、
みんな知らないだろこんなの、とかいう感覚でやってないですから。
すごくシンプルにいい音楽だからやりたいっていうふうに、やってるじゃないですか。
なんだかだいぶ変わってきたなというふうに思いますね、確かに。
あとやっぱり、なんか、みんなかっこ良くなってきたっていう(笑)。スター性がちゃんとあるというか。
だから人に観てもらうというか、聞いてもらうというか、パフォーマンスするんだっていう感覚を
普通に持っている人達が増えてきている。
べつに、求道者的にやるのが悪いとか全然思わないんですけれど、それはそれで大事なことですけど、
やっぱり、要は芸人じゃないですか。だからそういう部分をね、全然なんのてらいもなく、
自然に持ち合わせている人達がいっぱい増えてきているというのをすごく感じますね。

そうですね。20代でこういう音楽にのめり込んでやっているという状況はすごいですね。

いまちょっと、ふと思った事なんで、全然なんの裏付けもないんですが。
そうやって長い間かけてケルト的なものっていうのは、日本でも、例えば、アニメのジブリであったりとか、そういったもので、
本物とは違うにしても、そういうニュアンスが一回するっと入ってくると、なんかその元の元の本物をばーっと聞いた時に、
あ、なんかやりたいってなるっていう可能性もありますよね。
そういう、なんかこう、ちょっと邪道なんだけど、聞きやすい形で流れ出したことによって、
その間口がちょっと広がったとか、そういうことももしかしてあるのかも知れないですね。
いきなり洋楽でこれどうだって言っても聞かないですからね。

トシ: 僕はゲーム音楽からですね。

あ、やっぱり。

トシ: 間違いないと思いますね。同世代のアイリッシュをやっているミュージシャンや、アイリッシュ音楽を好きな人に聞くと、そういう人が多い。ファイナルファンタジーとかずーっと家でやってて、そんなに長い時間音楽を聴くんだから、もう体にしみ込んじゃう。

へー。映画「タイタニック」っていうのもあるの?

トシ: あれはわかりやすいアイコンですね。あれによって惹き付けられるアイコンだと思います。
リバーダンスとタイタニックあたりはそうじゃないでしょうか。

このシーンをみつめて

日本でアイルランド音楽が定着するって、どんなふうになった時なんですかね。

まあ、例えば、どこかの高校の文化祭に行ったら、こういう音楽をやってる人達が必ずひとついるとか。
あとは、もうちょい楽器が買いやすくなってくれると。ぱっと買えるのはホイッスルくらいですからね、今は。

ブズーキはちなみにいくらくらいするんですか。

ブズーキは普通のギターよりちょっと高いかな。まあ、10万円は越えますね。
で、弦とかも高い、ワンセット1800円くらいするわけだから。
でも、ブズーキはヤイリが作ってますし、ずいぶん手に入りやすくなりました。
イーリアンパイプとアイリッシュハープも国産が始まったようですよ。

ボタンアコーディオンも結構大変で。最初は日本アコーディオン協会っていう、
西日暮里にある所に探しに行ったんですけど、そんなものないって言われましたから。
ボタンアコーディオンはあるけど、そんなBCなんていうチューニングの楽器はありえないって。
基本的にああいう小さいボタンボックスっていうやつは、注文生産なんで、あると言えばあるし、ないと言えばない、みたいな。

トシ: 今後のこのシーンの展望を教えて下さい。ずっとシーンを見つめてきた沢村さんから見て。

んー。どうですかね。
なにか商業的に、この音楽で(成功する人が)、別にそれがいいとか、それを目指せとか言ってるんじゃないですけど、
そういう人が1人くらい出そうな気がするんですよね。なんかそんな予感がするんですよ。
もしそういう立場になれた人達が、それをどれくらい背負ってくれるかというところですね、後は。
だから、極端な話、特殊な楽器をやっているんであれば、
ケルト以外の演奏をしても構わないくらいな覚悟があれば、よりさらに広がるでしょうね。

トシ: ちょっと前の世代の人達は、ストイックでそれを受け入れにくいところがあったんですかね。

そうですね。ちょっと選民意識みたいなのがある方も、若干はいたし。でもそれが悪いなんて思わないです。

このCDを聞いて思ったのは、みんなすごい純粋ですよね。

本当に好きでたまらないっていう。なんか個性的ですよね、みんな。

トシ: 沢村さんがそれ(商業的な成功)をやろうと思わなかったんですか?

なんか、演奏してるだけで幸せっていうか(笑)。あんまりそこまで考えてなかったですね。

このCD聞いて、サッカーで言うとひょっとして世界レベルに近い所まできているんじゃないかという感想を持ちました。

音楽として、みなさん自分達の顔があるというか。
僕ね、極端な話、演奏力ってそんなに高くなくても音楽として伝わると思うんですよ。
大事なとこはそこじゃなくて。まあ、愛とかなんでしょうけど(笑)、やっぱり。
こういうトラディショナルってメロディーがあるだけですから、それをどういうふうにやるかっていうのは、
集まった人達の個性に頼る、同じ曲が全然違う曲に聞こえたりする訳で。
そういう、この曲をこういうふうにやりたいなって、やってるかんじがあって、それだけで、聞いててウキウキしちゃいます。
こういう音楽って、技術はもちろん必要だけど、それをひけらかすためのものじゃないですよ。
演奏が上手く行くと、こういう音楽に全然面識のない人達でも、本当に幸せ、幸せって言って帰ってくれますから。
なんかそういう力があるんでしょうね。やっぱりトラディショナルですからね。
長いこと生き残った曲ばかりですから。メロディーにきっと力があるんでしょうね。
あと、あれですね、欲を言えば、もうちょっと歌が聞きたいなと。
僕も下手なりに少しは挑戦するんですけど。意外にやってる人達が少ない。

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コメント: 1
  • #1

    Abraham (月曜日, 23 7月 2012 10:19)

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