インタビュー: Modern Irish Project 長尾晃司/大渕愛子

全員20代の若き東京アイリッシュ・ジェネレーションズ!Modern Irish Project。
ギターの長尾晃司さんと、フィドルの大渕愛子さんからお話を伺った。
天然?なのか、良い意味で明確な姿勢にびっくりです。

 

 

アイルランドで毎晩セッションに参加した半年間

まずは、長尾さんのプロフィールからお伺いします。  長尾さんは何年生まれですか?

長尾: 1982年の10月です。今年で28です。

ご出身は?

長尾: 生まれたのは札幌です。0歳で東京に来て。
それからずっと大田区大森です。大学卒業まではそこにいました。
今は川崎市の多摩区です。

音楽との出会いはいつ頃だったんですか?

長尾: 中学校のときに、ずっと陸上部をやっていて。
陸上部は駒沢競技場に行くんですけど、当時、すごいストリートミュージシャンが多くて。
そういうのを見てすごく憧れました。エレキギターを弾いてる人たちが(駒沢公園あたりには)いっぱいいて。
それに憧れてエレキギターのセットを買ったんです。

そのときは、どういう音楽を?

長尾: ビジュアル系ロックですね(笑)。LUNA SEAとか、ラルク・アン・シェルとかの全盛の時代で。
「バンドやろうぜ」とか見て地味にひとりでコピーとかしてました。家で。

へー。

長尾: それは、人前で出来るほど上達はせず。
その後、エリック・クラプトンのブームがあったんですよ。
そのブームに乗っかってしまって。「チェンジ・ザ・ワールド」のPVを見て、これはかっこいいと思って。

わかり易い(笑)

長尾: (笑)で、アコギを買ったんですよ。
それはけっこう自分には合っていたらしくって、意外と上達したんですよ。
調子に乗っていろいろとやっていくうちに、クラプトンと言えばブルースだ、みたいな感じで、だんだんルーツを遡って行って。
僕は、そこで、ブルースに行かずに、フォークに行っちゃったんですね。ボブ・ディランとか聞いて。
そういう雰囲気が好きだったんですよ。ちょっと田舎くさいじゃないけど、シンプルで、っていう世界観が好きで。
それは高校2、3年くらいなんですけど。その時期にいろいろフォークの周辺の音楽を聴いて、カントリーとか。
その一環でアイリッシュに出会ったんです。

そっかー。

長尾: 「ブレイブ・ハート」っていう映画があって、その中にバグバイプを使うシーンがあったんです。
それを観て、あれは何だ!って。
映像ではバグパイプだったんですけど、サントラのクレジットを見たら、それはイーリアン・パイプで。
スコットランドじゃなくてアイルランドの楽器だったんです。
っていうのがあって、ちょうどその頃、リバーダンスもブームで、新星堂とかでたまたま流れてたんですよ。
そこで売っていたCDが、ルナサとアルタンで、それも買って。すごいこれは肌に合うなと思って、ずっと聴いてたんですよ。
でもやろうと思ったのは、それから2、3年後で。自分はギターなんで、ひとりではなかなかやりにくくて。
大学ではジャズ研に入っていて。

ちなみにどこですか、大学は。

長尾: 桜美林です。町田の。そこで、ヴァイオリンを弾く子が後輩で入ってきて。
どんなのやってるのって聞いたら、クラシックをずっとやってて今はやってないんですっていうんで、
「しめた!」と思って、こんなのやってみないって、アイリッシュを聞かせて。
それではじめて僕もアイリッシュ音楽を演奏したんです。僕が3年生の時です。

1、2年生の時は?

長尾: フォークですね。クラプトンのコピーをやったり、誘われてブルースバンドをやったり。

基本的にはアコギをずっと?

長尾: アコギですね。それまでは、自分の中で芯のある音楽活動って一切なくて。
わりと浮気な感じでいろんな事をやってました。

で、たまたまヴァイオリンの子が来たから、

長尾: そうですね(笑)。やりたいっていうのはあったんですけど、きっかけとしてはそうですね。

ふたりで始めたんですか?

長尾: その時に、パーカッションをやる人に、バウロンっていう楽器があるよって言って、バウロンをやってもらったりして。
即席で集めたメンバーで。

じゃあ、長尾君の企みが上手くいったと。

長尾: そうですね。5人で。

5人?あとは?

長尾: アイリッシュ・ブズーキとティン・ホイッスルです。
ティン・ホイッスル安いからって言って、わりと興味のありそうな人にやってもらって。

みんなジャズ研のメンバー?

長尾: そうですね。

それはMIPとは関係ない?

長尾: 全く関係ないです。ジャズ研の中でアイリッシュをやってる人はひとりもいなくて。

2003年頃だね。そのバンドはどんな活動をしたんですか?

長尾: そのバンドは、何回かアイリッシュパブでライブをやりました。
吉祥寺の、もうなくなっちゃたシャムロックっていうところでやって。
あと立川のアイリッシュパブでよくやってました。
その後、僕がアイルランドに長期旅行に行きたいっていうことになって、いったんこのバンドはお休みねって、
まあ、一時解散みたいなかんじになって、その後動いていないんですけど。

それは何年くらい活動したんですか?

長尾: 2、3年ですね。大学出て1年くらいやってました。
大学出て、一回就職して、半年くらいで辞めて、翌年の4月にアイルランドに行って、半年くらいふらふらして。
で日本に帰ってきたのが、2007年のあたま。

MIPは2007年結成と書いてあるから、帰ってきてわりとすぐに結成したんだ。

長尾: 帰ってきて、半年くらいしてから、大渕さんを誘ったんですよ。
調布にパブがあって、そこで毎月、定期で演奏するっていうことをやってたんです、僕ひとりで。
そのパブで大渕さんと演奏をしたりしてました。

調布の何ていうパブ?

長尾: ケニーズっていう。

ああ。O'Jizoの豊田さんとかも出ていた。なるほどね。

話は、すみません、少し戻って、アイルランドの半年間について教えて下さい。

長尾: 最初はバックパックで行って、エニスっていう西海岸の街があって。
リムリックとゴールウェイのちょうど間にある街で。そこが割と肌に合ったんですよね。
アイルランドに行って、レンタカーを借りて、とりあえず1周していろいろぐるぐると街を見て回って。
時期が4月だったんで、セッションとかない時期で。

車で回るって、あの島、どれくらいの大きさなんですか。

長尾: ちょうど北海道くらいでしょうか。

結構大きいね。でも車で回れない事はないか。

長尾: そうですね。で、ダブリンとかは肌に合わなくて。
北の方はすごい好きだったんですけど、あまりにも人がいなさすぎて。
週に1回しかセッションがないとかいう環境で何ヶ月も居てもあんまり意味ないなと思って。
で、ちょっと田舎くささを残して、かつ音楽がすごい盛んになっているっていう所が、エニスで。
そこに住もうと決めて部屋を借りて。基本、毎日セッション、みたいなかんじで。

それは、パブで?

長尾: そうです。でも僕、そんなに弾けなかったんで、とりあえず楽器を持って行って、絶対参加はするんですけど・・・。
どう思われてたかは判らないけど、毎晩パブには行ってたことは行ってた。

曲は聞いてて知っていたんですか、トラディショナルを。

長尾: ほとんど知らなかったんですよ、その当時。
だけど初心者の怖い所で、それでも参加しちゃってたんですよね。いま考えたら・・・。

長尾君が聴いてたアルタンとかルナサって、トラディショナルが中心、ではないよね。トラディショナルを取り入れているけど。

長尾: そうですね。部分的にというか。
これがアルタンのやってる曲だ、ルナサのやってる曲だ、って判る事は判るんですが、
それが一晩のセッションで1曲あるかないか、という感じでした。

トラディショナルはすごくたくさんあるんですね。

長尾: そうですね。で、僕はあんまり覚えないタイプだったんですよ。良くないタイプのミュージシャンで。
適当に参加して、今日も楽しかったね、みたいになって満足してしまうタイプだったんで。
いまもって、その時、毎晩セッションに参加したっていうのが、自分のどこに身に付いているのか、判んないんですけど。
きっとどっかには身に付いているとは思うんですけど。

そんなふうに、毎晩セッションに参加できるの?日本人が突然行って、やらせてくれって言って・・・。

長尾: アイルランド人ってけっこう曖昧な所があって、本当に受け入れてくれてたかどうかっていわれると、
わかんないけど、「おー今日も来たな」みたいな感じで。まあ、いろんなところでセッションやってるんで。
何曜日はここ、何曜日はここ、みたいなかんじで分けて行ってて。

トシ: 長尾君に限らず、そういう人は多いです。一定期間滞在して、セッションに参加するという。

行けばやらせてくれんるんだ。

トシ: それはその人の資質によります。
すごい謙虚であれば受け入れてくれるだろうし、場を乱そうとすればそれなりのバイアスがかかるという。
比較的、日本人はおとなしい人が多いので、そんなに無茶苦茶変な対応はされないですけど。

半年もいると、なんかこう、ロマンス的なことがあったりしないの?下世話ですみません。

長尾: ないですね(笑)。

あったほうが面白いじゃない。あるとすごく楽器が上手になるとか。

長尾: でも、本当にそれはあると思いますね。
変な話、僕、ギターやってて、現地のフィドラーとかと付き合ったら、全てが上手く行くだろうなと思って(笑) (一同、爆笑)

画策したりして。

長尾: そんな余裕なかったな。

ひらすら音楽をやる半年間で?

長尾: んー。ひたすらアイルランドで生活をするっていう感じでしたね。

それは誰か知り合いが向こうにいたから、行ったとか?

長尾: いや。

突然、自分で思い立って行った訳?

長尾: そうですね。

そういう情報とかもなく?

長尾: 情報は探せばあったんでしょうけど、僕はあんまり知らないまま行きました。
エニスっていう街の存在も知らなかった。一応、大使館には行ったんですよ、アイルランドの。
観光ビザじゃなくて、もうちょっといい方法はないのかって聞いてみたら、それはありませんって、突き放されて。

そののめり込んで行く感じってさ。たとえば、たまたま新星堂で聞いたわけじゃない。
そこから、アイルランドに半年間住んじゃうまでの、そのへんののめり込んでいく様について知りたいな。

長尾: うーん。そのくらい肌に合ったっていうことかな。
まず、演奏してないで肌に合うって思ったから、よっぽど好きだったんだなって。

そうだね。数十曲レパートリーがバリバリ弾けて、それで行くっていう感じじゃないもんね、雰囲気としては。

長尾: そうですね。行けばなんとかなるだろうっていう、ちょっと甘い考えでもあったんですけれど。

すごいなー。それで帰ってきて、調布のパブに出つつ、と。

長尾: 豊田さんともその調布で出会って。彼らがライブをやってるところに、僕、家近いから遊びに行って。
豊田さんの前のバンドの解散の直前くらいの時期で。それを2回くらい見に行って、意を決して話しかけてみたら、
ちょっと、セッションでもしようよ、と、その場でセッションみたいになって。
気に入ってくれたみたいで、その後に豊田さんから連絡があって、ちょっとこんな仕事があるんだけどって話を振ってもらって。
(リゾート施設演奏の)オーディションに通って。その楽屋で豊田さんにいろいろと教えてもらいつつ。
その時期が一番、アイルランドで身に付けてきたものや、豊田さんに教えてもらうものを、
自分の中で練り上げて、一番練習した時期かなと。

豊田さんとはO'Jizoをはじめて、その一方で、MIPもスタートしたんですよね。

長尾: MIPの前身として、調布のケニーズで大渕さんを誘って、デュオとかでやってたんですよね。

大渕さんとは、ケニーズで出会ったんですか?

長尾: リゾート施設演奏のオーディションに彼女がいたんですよね。
たまたま組み合わせで一緒になって、1曲演奏したときに、すごい上手だなと思って。
いつか一緒に演奏したいと思って、ケニーズで相手がいないって時に、思い切って誘ってみたんです。

豊田さんのお陰だ。豊田さんが長尾君を誘ってくれなかったら、大渕さんとは出会ってないかもね。

長尾: そうですね。

15歳でクラシック・ヴァイオリンに決別、高校生でアイリッシュ・パブ通い。

結成以降の話は後で、聞くとして、ここで、大渕さんについていろいろとお伺いしたいです。

大渕: はい。よろしくお願いします。

女性に年齢を聞くのは大変失礼なんですが・・・。

大渕: 私、明日24になります。 (一同 わー。おめでとう!)

ご出身は?

大渕: 私、ずっと世田谷です。生まれも育ちもずっと世田谷で。

ヴァイオリンはいつ頃から?

大渕: 幼稚園の年中の頃に。
通っていた幼稚園の建物が雑居ビルで、その上にヴァイオリン教室があって、友達が通っていました。
ヴァイオリンをやりたいんじゃなくて、友達がやっているからヴァイオリンをやろうって。5歳かな。

じゃあ、もう19年くらいやってるんだ。

大渕: クラシック自体は15歳くらいで辞めちゃったんですけど。

あ、そうなんですか。

大渕: 最初に通ったヴァイオリン教室で、とりあえずはヴァイオリンを習っているっていうだけでした。とりあえず続けて。

そのヴァイオリン教室ってどういうことをやるんですか。初歩的な質問ですみません。

大渕: 持ち方とか、構え方から入って。スズキ・メソードの支社でした。
教材が1巻から10巻まであるんですけど、きらきら星から、モーツアルトや、バッハをやっていきます。
曲を弾くっていうかんじですね。大会とかはなかったですけど、発表会みたいなのは年1回くらいあって。

何人くらいいるんですか。

大渕: 教室は10人くらいです。

じゃあ、少数精鋭なんだ。

大渕: 幼稚園の上にあったので、幼稚園から来る人が多くて、あとは近所の子とか。
最初は一番下なんですけど、気付くと上にいた人がみんなやめちゃって一番上にいたっていうかんじでした。
後から小ちゃい子が入ってきて。

15歳でクラシックを辞めるというのは、何かあったんですか?

大渕: もとから練習が嫌いだったんですよ。10歳越えて、曲も難しくなていって。
練習無精ということもあって、楽譜通りに弾くのがすごい嫌だったんですよ。
クラシックってアイリッシュとかとは違って、弓順も書いてあるし、強弱も書いてあるし、
みんな同じように弾かなきゃいけないっていうのがあるので。
先生に、なんで同じように弾かなきゃいけないんですかって言って。
その時は別に喧嘩になったりはしなかったんですが・・・。
教材の一番最後、9巻、10巻なんですけど、モーツアルト1曲だけすごい大曲をやるんです。
それがすごい性に合わなくて。とりあえず、高くて速くて。この辺まで押さえてっていうやつで。
で、今考えると、ちゃんと弾けてたっていうかんじでもなかったんですよね。ヴァイオリン自体が。
音も全然吸い付いてないし。持ち方とかは出来るけどっていうかんじで。
で、まあ、合いませんわって言って、高校に入ったのをきっかけに辞めて。

高校では、ブラスバンドとか?

大渕: 部活は合唱部をやってました。
当時は、ヴァイオリンで、クラシック以外にどんなジャンルがあるのか全然知らなくて。
葉加瀬太郎がやっているようなポップス、クラシック以外のものをやろうと思って。
でもひとりでやるのもあれだし、オーケストラはないかな、と思って探したんです。
高校が晴海の方なんですけど、たまたまその近くにポップスオーケストラっていうのがあって、見学しに行ったら、
同じヴァイオリンパートにアイリッシュをやっている方がいたんです。
「見学希望」と掲示板に書き込むときに、ハンドルネームをなんだか知らないんですけど、
FIDDLEにしたんですよね(FIDDLEの意味も知らなくて、たまたま読んでいた小説にそれが載ってて)。
そしたら、そのヴァイオリンの人が、フィドルやるんですかって言って来て。「いえ、全然知らないです」って。
そしたらこれを聴けって渡されたのがアイリーン・アイバース。リバーダンスのコンサートマスターをやっていた人で。
それを聴いて、そこから入ったんです。
アイルランドが何かとか、どこにあるかとか、どうだっていうのは全然前情報として知らなかったんですけど、
これは面白い、と思って。高校2年の時です。

衝撃を受けたわけですね。

大渕: で、部活の方で音楽がらみはあったので、とりあえず焼いてもらったCDを片っ端から耳コピして、
高校2年の終りにバンドを立ち上げて、全部のパートの楽譜を書いて。
1年半くらいアイリーン・アイバースのコピーバンドをやって。
高校3年になる前の冬に大崎品川の方で結構大きいアイルランドフェスみたいなのがあって。
そこでそのアイリーン・アイバースを教えてくれた人がワークショップとかをやってたんで、行ったりとか。
そこではじめてセッション出て。
当然、曲はコピーしたやつしか知らないし、どういうシステムになっているのかもわからないので、
とりあえず大勢の中に混ざって弾いてたら、たまたま隣に四谷でセッションを持っている方がいて、
今度遊びにおいでよって声かけてもらって。
それから2年くらい、高校卒業して大学に入るくらいまで、ずーっと四谷に通って。

それはパブですか?

大渕: パブです。

高校生が行っていいんですか(笑)?

大渕: 特にそれは言われなかったですけど。親もけっこうウチは放任主義なので。
あらおもしろそうじゃないって言って付いてきた事はありますけど。

で、進学は音大とか?

大渕: いえ、普通に。法律を勉強しに行ったので。神奈川大学です。

そこで音楽のサークルに入ったりとかしたんですか?

大渕: 入ろうとしたんですけど、話が合わなすぎて結局入りませんでした。
最初にヴァイオリンの幅を広げたいなと思って、ジャズ研に行ったんですけど、
部屋が狭いのと、人が少ないのと、金管ばっかりで、弦楽器は全然話にならなくて。
で、ジャズ研のある大学のミーティングみたいな所に行ったら、
八王子の方に、ヴァイオリンでジャズをやっている人がいるからって。
あるんだなあ、と思ったけど、それっきりで。

ステファン・グラッペリとか聞かなかったんですか?

大渕: ステファン・グラッペリも、そのアイリーン・アイバースの人が教えてくれて、いいな、と思って。
それもあったからジャズ研に行ってみたんですけど。あんまりシチュエーションが良くなくって。
高校2年の終りからずっと都内のセッションはいろいろと行っていたので、
結局、大学の中で何かやるっていうよりは、大学には勉強しに行って、授業終わったらもうとっとと帰って、
他のセッションに行ったりするっていう、外部活動ばかりしてましたね。
やっぱり、セッションに長く出ていると、声をかけてくれる方もいたので。

特にバンドを組むということはなかったんですか?

大渕: 声をかけてもらって、ユニット的なものはやってたりしたんですけど。CD作ったりとかはなかったですね。

アイリッシュ一筋というかんじだったですか?

大渕: うーん。形容するとアイリッシュだけど、アイルランドの本質に興味あるかって言うとそうでもないですよね。
好きだけど、どっちかっていうと、アメリカよりの方がカラー的には好きだし。

アメリカ的って言うと?

トシ: アイリーン・アイバースがまさにそうですね。
アイリッシュのトラッドだけじゃなくて、いろんな音楽の要素を混ぜ合わせていくという。
アイリーンはアメリカのフィドラーとしては代表的な人で。
アイリッシュ音楽のフィドラーではあるけれど、いろんな要素を取り入れてやってるっていう。

大渕さんはアイルランドに行った事は?

大渕: 18歳のときに個人旅行で10日間だけ行ったんですよ。
夏に大きな祭りがあるから、夏は高いけど、行っておこうと。10代のうちに。
結局お祭りはそんなに面白くなかったんですよ。まあ、いろいろあって。
二人で行ったんですけど、別行動になって。英語もそんなに喋れないし、外国ははじめてだし。
早く帰れないかなと思って。
空港に行って早く帰れませんかこれ、って交渉したんですけど全然何言ってるかわかんなくて。
しょうがないからなんかやるしかないなと思って。
泊まってるのがダブリンの北のホテルだったんですけど、テンプルバーっていう一番栄えてる所、
川を渡って南側の所のパブをもう手当り次第にあたって、セッション混ぜてよって言って。
20軒くらい断られて。
やってないとか、入れないとか。
ショーをやってるからオープンではないとか。
で、名前は忘れたけど結構有名な所があって、そこが良いよ、って言われて、ずっとそこにいましたね。

へー。

大渕: お祭りを観る以外はずっとそこにいて。午後3時くらいからやってるから、3時から11時くらいまでずっとそこにいて、

飛び入りして?

大渕: そうですね。

それはトラッドを演奏するんですか?

大渕: トラッドですね。普通に曲をまわして、伴奏つけて、みたいな。

結構、曲を知らないと出来ないですよね。

大渕: うーん。その時点でセッションに1年半くらい行っていたことになるので。
わたしはどっちかっていうとメロディーだし。
高2でこっちでセッションに入り始めた時から、とにかく曲を覚えようと思って。
参加するたびに録音をして、それを片っ端から耳コピして。
セットを自分で作って、参加する時は必ず新しいセットを自分で出そうとしてたんで、
曲数はある程度知ってたけど、知らないのもあったんで、そこでまた録ってとか。

結構鍛えるんですねー。ヴァイオリンを身につけるためには幼少からすごい量の練習をするんですよね。

大渕: 私、全然やってないです。本当にサボり魔なので。
なんか目的がないとやれないな、っていうタイプ。
今考えると、アイリッシュを演り始めた頃の練習量ってすごいし、それのことを考えている時間もすごいし。
練習をしてるっていうよりは、弾きたくて弾いているっていうのが強かったです。

クラシックの練習とは違うんですね。アイリッシュは。

大渕: 全然違いますね。お手本があってそれ通りにやるっていうことではなくて。
譜面はネットとかにもあるし、最近は楽器屋さんにも売ってますけど、ボウイングとか弾き方は全然書いてないから、
頭を使わないと自分らしく弾けないから。
考えて弾くということを、アイリッシュをはじめてから、やるようになったんで、それがすごく楽しい。

聴いて研究したりとか?

大渕: それもあるし。コピーから入ったから、ボウイングを真似てみたりとか、装飾を真似てみたりとかして。
そのまま弾いてたら、本当にそのままなんだけど、数をこなしてると何となく消化できたかな、という。

へー。さっき、ステファン・グラッペリが出ましたが、日本ではヴァイオリンって割とジプシー的なものに行く傾向があるような・・・。

大渕: 何でですかね。

いろんなことをやる中でアイリッシュみたいな事をやるヴァイオリニストの人はいても、
アイリッシュだけをどん!とやって人って日本にはけっこういういるんでしょうか?

大渕: 私は、フィドルを人に教えてたりするんですが。
中東系(ジプシー系)って、まあ、そんなに研究していないからわからないんですけど。
クラシックを奇麗に正確に弾けて、ビブラートとかをバリバリかけられるっていう流れでやってるのは、
アイリッシュよりも中東系なんです、ニュアンス的には。
アイリッシュは音を奇麗に出すっていうことよりは、ノリを出すっていうことが先決する、と思っているので。
ノリの出し方を分析してると、力学的な事が多くてですね。持ち方とか、構え方とか、力のかけ方とか。
弾けば音は出るけど、ノリが出ないっていうので、学びに来る人が多いです。
だから、もしかしたら、奇麗に弾ける人にとっては、中東系よりアイリッシュの方が難しいかもしれないですね。

なるほど。アイリッシュのヴァイオリンは、中東系とはまるでコンセプトが違う、と。

大渕: そうですね。踊りの音楽で民族の音楽という共通点はあるけど、
そこまでがつがつノリを出して延々とループするっていうタイプではないですね、アラブ系も、ルーマニア=中欧系も。

これ、楽器自体はクラシックで使うものと同じなんですか?

大渕: 一緒です。呼び方が違うだけで。

アイリッシュ音楽用のヴァイオリンがあったりして。

大渕: それはよく聞かれますけど、楽器は一緒です。

弦も?

大渕: 弦は好みです。

トシ: 駒の高さとかが違うかも。アイリッシュの方が若干低いのでは。

大渕: あれは良くないらしいですよ。自分で削るのは。
楽器によって、システムというか、本体に対する駒の高さはあらかじめ決まっているものだから。
低く下げれば弾き易くなるけど、ノイズが出やすくなるので。やっぱり、ちゃんとシステム化されて、測られてあるから。
私も自分で削ったりしたんですけど、やっぱり、ノイズが出るし・・・。

Modern Irish Project結成

長尾くんとの出会いは?

大渕: 今考えると豊田さんが原因で、というか(笑)。豊田さんには別の場所のセッションで会って。

それはパブですか?

大渕: パブじゃなくて花見のセッションだったんです。全然関係ない人が花見やるぞーって言って。
それで集まったんです。音大でやっててどうので、チューニングがどうので、とか言って、変な人だなと。
私が大学3年の時に、オーディションがあって、豊田さんが声をかけてくれました。
ヴァイオリンが足りなくて、基本的に学生は採らないんだけどって。
その時点で訳が分からないんだけど、面白そうだから出てみよう、と思って行ったら、長尾くんとかがいたんです。
私は結局ダメだったんですが。それでぼけーっとしてた夏くらいに声かけてくれて。
それから長尾君と一緒に演ってます。

大学3年の時?

大渕: そうです。2007年ですね。

それがこのModern Irish Projectなんですね?

長尾: 最初は二人で演っていました。その時は名前付けてなくて。

大渕: 名前を付けた時点では3人だよね。

長尾: そうだね。
結成して3−4回ライブをやって、その年の暮れに立川のパブでクリスマスライブをやってくれって言われまして。
ちょっと華やかにやってくれと。ふたりだけだと、ちょっとあれだなと思って、パーカッションを入れようと思ったんですよ。
知り合いの友達にタブラ奏者を紹介してくれって言ったら紹介してくれたんですが、その人は全然予定が合わなくて。
じゃあとりあえず今回は彼で良いやって、その紹介してもらった元が田嶋君です。彼は仙波清彦さんの弟子です。

同世代ですか。

長尾: 僕と同い年です。
で、彼に参加してもらったら、楽しいねってことになって、じゃあ次もこのメンバーでやってみようか、っていう流れで、
あれよあれよと、一緒にやるようになって。
とりあえず手売り用のCDを作ろうてことになって、バンドとしてまとまったかんじですね。

大渕: 結成した2007年12月の翌年、2008年の春くらいに、活動する場所が欲しいよねって、いろいろパブをあたって。
いま、横浜で月イチで演ってるんですけど。

そこは何ていう?

大渕: 横浜のグリーン・シープっていう。西口のハンズの裏のちょっと怪しい所にあるんですけど。
いろんな人が当時演奏してたんですが、あんまり居着かなくて。
結構、都内でも枠を持っちゃってる人が多かったんで。
横浜は個人的に好きだったんで、やろうやろうと思って。
そんなに長続きはしないだろうなと思ってやってたんですけど。今もやってますよね。

ほぼ、ライブはパブ中心ですか?

大渕: ライブハウスに出るっていう方針のバンドではないので。いろいろやりたいな、とは思ってるんですけど。
で、結構セッションを通じて東北の友達とか、関西の友達とかと仲良くなって、
こっちに遊びに来なよってことで、向こうのジャズフェスに行ったりとか。
関西のパブに出させてもらったりとか、小さな個人的なツアーをやったりしてます。

CDはこれまで2枚。

長尾: はい。2009年の秋に2枚目を。

トシ: これ、ピーター・バラカンさんがラジオ番組で流してくれたんですよ。

すごい!今はライブの頻度は?

長尾: 田嶋君を入れてだと、月に1回か2回。他に、二人での活動もあります。

トシ: 長尾君は他にバンドをいくつか、O'Jizoとか、やってます。単体で他のセッションに出たりとか。
大渕さんもいろんなセッションに出つつ、武蔵小杉で自分でセッションを主宰しています。

ふたりは結構ストイックにアイリッシュのみをやってるんですか?

大渕: 私は幅を広げたいので、いろんな活動をしています。

Modern Irish Projectは、オリジナル曲もやるんですか?

長尾: はい。少しですが。

大渕: オリジナルって、部分的な方法としてはありだと思うんです。
アイリッシュの曲をやりたいなっていうのは共有してるので、アレンジをちょっと奇抜にしようっていうことなので。
オリジナル曲をばしっとやって、っていうのはないです。

Modern Irish Projectの特徴ってどんなところですか?他と違う所って。

長尾: 僕が思う所では。
アイリッシュのバンドって割と、みんなで足並みを揃えて活動しましょうっていうかんじだと思うんですけど。
僕がこのバンドでやりたいと思ったのは、クリーム。
みたいな。トリオで、3人バラバラに、こう、僕出たい、僕出たい、みたいになっているような状態なんだけど、
バンドとしてすごいグルーブがあるっていうような状態が、割と僕の理想で、このバンドやっていく上で。
で、そういうバンドとしてまとまりきらない感をちょっと持っていたいな、っていう。
個々の技のぶつかり合いみたいなものを。

大渕: そうだね。

ちょっとロックっぽいんですか。このバンドは。例えばO'Jizoと比べて。

長尾: O'Jizoは、けっこう作り方が、アレンジしていく時に、やっぱりクラシックの人が多いから、
ものすごい、こう、理論というか、ちゃんとこう踏まえてここにこう行くというのがあるんですけど。
Modern Irish Projectは出たとこ勝負なかんじがあって。

大渕さんはModern Irish Projectの特殊性は何だと思いますか?

大渕: 個人対個人対個人っていう。セッションと言っちゃうとニュアンスが違いますけど。
ラフだけどしっかりやる。
ベースはアイリッシュであり、ジャズや、ロックや(そんなに勉強したわけじゃないけど)、新しい何かに近いのかなと。
個人的には、おしゃれバンドっていうふうに言ってたんですよ。Modernとか使ってますし。
名前はそれはそれで曖昧な所があるんですけど。
とりあえず、アイリッシュを単純にトラッド的にだらだら演るのはやめましょうね、っていうつもりではあるんで。
アイリッシュでもこれができますよ、っていうことを発信する。っていうと大げさですけどね。
話がちょっとずれるんですけど、たまたま私が好きなプレイヤーと、長尾君が好きなプレーヤーが一緒に演ってるんですよ。
そこのところで、まあ、言わなくても通じる所みたいなのはある。好みとか趣向的に。

それは?

トシ: 大渕さんが好きなアイリーン・アイバースと、そのアイリーンバンドのギターで、長尾君が好きなジョン・ドイル。
素晴らしいですよ。

大渕: アルタンとか、奇麗で渋いようなアイリッシュが好きです、って入る人が多いんで。
あんまり、戦闘系でがつがつやっているような人達って見ないし。
そういう意味では、戦闘系でやってますっていう(自分達は)希少価値ではあるかなと。

ライブではお客さんはすごく盛り上がるんですか?

長尾: はまるとすごく盛り上がります。はまらないと、なんでこういう曲になるんだろう、とか。まあ、リスキーな。

大渕: はじめて声をかけてくれる人からは、おしゃれだね、とか、ジャズっぽいね、っていうふうな感想をもらうんですよね。

長尾: ロックだね、って言われると、嬉しいですよね。

ジャズ的なコード感はけっこう取り入れてるんですか?

長尾: 導入として取り入れてはいますけど。
コードにメジャーセブンスの音を取り入れるとか、その程度だと思うんですよ。
たまに、一瞬フォービートの音を入れてみるとか。

トシ: ドラムの音が、ジャズとかロックとか感じさせるのかも。
確かにアイリッシュのバンドで、ドラムが入っているのって少ないような。

平田: waitsは、ドラムがるので、パブではやりにくいって話をしていたんだけど。。。

トシ: waitsはメタルあがりのドラマーで、必ず、バスドラもばんばん出すっていう。田嶋君は意外と軽量で、バスドラも自作だったり。パブの大きさに合わせて持ってきたりとか。どちらかというと、発想がパーカッションなんですよ。

平田: このバンドのこの先の目標とかありますか?

大渕: 横浜のパブでずーっとやり続ける意味はあると思います。
バンドのアイデンティティ的には他とは違うという自信を持っています。
それで、売り出そう!とかいう大きな話はあんまり簡単には言えないんですけど。
活動を続けて広げて行きたい。いろんな所に行ってみたいね、みたいな。

アイルランドでこのバンドが演奏する計画とかあるんですか?

大渕: あー。良いですね!

長尾: このバンドで行ってみたいっていうのはありますけどね。
こういうことをやっている人たちってアイルランドにもあんまりいないから。

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コメント: 1
  • #1

    Cassius (月曜日, 23 7月 2012 01:03)

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